盆栽の世界では、「西の四国(石鎚・赤石)、東の吾妻・那須」と言われるほど、産地によってブランドが分かれています。
前回ご紹介した那須五葉松が「質実剛健な美しさ」を持つ一方で、今回ご紹介する「吾妻五葉松(あづまごようまつ)」は、「密集した短い葉の美しさ」を持っています。
寒さの厳しい東北の地で育った、強くて美しいこの木は、那須五葉松と並んで初心者にとって最も扱いやすい五葉松の一つなのです。
「吾妻五葉松」ってどんな木?
その名の通り、福島県の吾妻連峰(あづまれんぽう)周辺に自生していた五葉松の系統です。 展示会などでも主役を飾ることが多く、全国の盆栽愛好家から「五葉松と言えば吾妻!」と絶賛されるほど、格式と人気を兼ね備えた、まさに「五葉松の王道」と言える品種です。
ここが違う!吾妻五葉松の3つの特徴
吾妻五葉松の特徴
四国などの他の五葉松と比較すると、その違いがよく分かります。
葉が「短くて密集している」

四国系が「シュッと細くて長い葉(女性的)」なのに対し、吾妻五葉松は「葉が短く、少し内側にカールするように密集して生える」のが特徴です。 葉が短いということは、盆栽にした時に全体がギュッと締まって見え、特別な技術がなくても「まとまりの良い姿」になりやすいというメリットがあります。
成長が「ゆっくりで穏やか」
黒松などに比べて、吾妻五葉松は成長がとても穏やかです。 「成長が遅い」と聞くとデメリットのように聞こえるかもしれませんが、盆栽においては「せっかく整えた枝の形が、すぐに伸びて崩れたりしない」という最高のメリットになります。
寒さに「最強」

暖かい地域の松よりも、雪深い東北地方の厳しい山肌で育つ松の方が、当然ながら寒さにはめっぽう強いです。 冬の寒風や霜にも強く、ちょっとやそっとの環境の変化ではへこたれません。冬の寒さが厳しい地域にお住まいの方でも、特別な防寒対策なしで屋外で元気に冬を越せます。
なぜ初心者に「吾妻」がおすすめなのか?
それは、「放っておいても形が崩れにくいから」です。
五葉松の中には、肥料や水をあげすぎると葉がビヨンと長く伸びてしまい、だらしない姿になるものがあります。 しかし、吾妻五葉松は性質(遺伝子)として「葉が短くまとまりやすい」という特徴を持っています。 頻繁にハサミを入れて剪定しなくても、美しいシルエットをキープしてくれる、非常に「親孝行な木」なのです。
失敗しない!吾妻五葉松の育て方
非常に丈夫ですが、以下のポイントを押さえておくと、より美しく育ちます。
春は「お日様」をたっぷりと
春の芽出しの時期は、しっかりとお日様の光に当ててあげましょう。春の日差しを浴びることで、葉の緑色がさらに濃く美しくなり、丈夫な木に育ちます。
水やりと肥料は「控えめ」がコツ
東北の岩場に生えている木なので、ジメジメした環境は苦手です。「土が完全に乾いてから水をあげる」というサイクルを守ってください。 また、肥料をあげすぎるとせっかくの短い葉が伸びてしまうことがあります。規定量よりも「ちょっと少なめ」に置くのが、美しい姿を保つ秘訣です。
植え替えは「春の芽が動く直前」に
もし鉢の底から根がはみ出していたり、水はけが悪くなっている場合は、春の芽が動き出す直前(3月中旬〜4月上旬)が植え替えのベストタイミングです。
まとめ:迷ったら「吾妻」を選べば間違いない
吾妻五葉松は、特別な派手さはないかもしれませんが、「いつ見ても飽きない、自然な美しさ」があります。
- 葉が短く密集して、まとまりが良い。
- 成長がゆっくりで、樹形が崩れにくい。
- 寒さに強く、葉が伸びにくいので管理が楽。
「盆栽を始めてみたいけど、難しい手入れは自信がない…」 そんな方は、ぜひ吾妻五葉松から始めてみてください。その丈夫さと自然にまとまる美しさに、きっと助けられるはずです。
吾妻五葉松の実生にチャレンジしたいのですが、なかなか種が売っていません。もし種をお持ちの方がいらっしゃいましたらお譲りくださいませ・・・



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