師走に入り、街が慌ただしくなるとともに、寒さも一段と厳しくなる12月。 盆栽たちは活動を完全に停止し、春までの長い眠りにつきます。葉を落とした雑木類の「寒樹(かんじゅ)」の姿は、凛とした静寂な美しさを放ちます。
12月は、大切な樹を凍結や乾風から守る「保護」がメインの月です。一年間楽しませてくれた感謝を込めて、快適な冬の寝床を整え、新年を気持ちよく迎える準備をしましょう。
12月に見頃を迎える盆栽
冬枯れの景色の中で、鮮やかな花や緑が心を温めてくれます。
- 椿(ツバキ)・山茶花(サザンカ) 冬の貴婦人とも呼ばれる花もの盆栽。雪の中でも艶やかな葉と美しい花を咲かせ、冬の床の間を飾ります。
- 松竹梅(しょうちくばい) お正月の縁起物として、黒松(松)、笹(竹)、野梅(梅)を寄せ植えにした盆栽が人気です。12月中に仕立てて、お正月の玄関に飾ります。
- 南天(ナンテン) 「難を転ずる」縁起木。真っ赤な実と葉が、お正月の飾りとして重宝されます。

置き場所:「ムロ入れ(保護)」の開始
氷点下になる日や、冷たい北風が吹き荒れる日は、盆栽にとって命取りになります。「ムロ」と呼ばれる保護場所へ移動させます。
- ムロの条件
- 風が当たらない場所: 寒さそのものより、「乾いた寒風」が枝を乾燥させて枯らします。
- 凍らない場所: 鉢の土がカチカチに凍ると根が傷みます。
- 日当たり: 昼間は日光が当たり、温度が上がりすぎない場所(蒸れ防止)。
- 具体的な場所
- 発泡スチロール箱: 小品盆栽なら、箱に入れて夜だけ蓋をするのが最も手軽で効果的です。
- 軒下・簡易ビニールハウス: 風除けを作った棚や、園芸用の簡易ハウスに入れます(昼間の換気に注意)。
- 室内(注意): 暖房の効いた部屋は「乾燥しすぎ」「暖かすぎて春と勘違いする」ため、盆栽には最悪の環境です。飾るのはお正月の3日間だけにして、基本は寒い屋外(または無暖房の玄関)で管理します。

水やり:控えめに、凍結に注意
吸水量は最小限になりますが、乾燥した冬の空気は大敵です。
- 頻度:2日〜3日に1回
- 鉢のサイズや樹種によりますが、土が乾いて白くなってから数日待つくらいで丁度よい場合もあります。
- あげる時間帯: 必ず「午前中(朝10時〜11時頃)」にあげてください。夕方にあげると、夜間に余分な水分が凍って根を傷めたり、鉢を割ったりします。
肥料:完全ストップ
休眠中のため、一切不要です。 もし置き肥が残っていたら、カビの原因になるのですべて取り除いてください。
消毒:冬の特別なケア「石灰硫黄合剤」
盆栽愛好家が12月〜1月に行う重要な作業です。
- 石灰硫黄合剤(せっかい・いおう・ごうざい) 独特の硫黄の臭いがする薬剤です。これを30倍〜50倍に薄めて、筆で木全体に塗るか、散布します。
- 効果
- 殺虫・殺菌: 幹の割れ目などで越冬しようとしている害虫や病原菌を根こそぎ退治します。
- 白くする(ジン・シャリ): 枯れた枝(ジン)や幹(シャリ)に塗ると、真っ白く漂白され、防腐効果とともに見た目の美しさ(古色)が増します。
- 注意点 鉢(陶器)にかかると変色することがあるので、土や鉢を新聞紙で覆ってから作業します。
樹種別の作業:雑木の針金掛け
落葉樹(モミジ・カエデなど):針金掛け
11月に引き続き、葉がないこの時期は、枝の細かい曲がりを直す針金掛けのベストシーズンです。 ただし、冬の枝は水分が少なく折れやすいため、無理に曲げようとせず、優しく誘導するように巻いてください。

松柏類:お正月の整姿
お正月に飾る松などは、鉢をきれいに拭き、表面の苔が茶色くなっていれば、新しい緑の苔を貼り直して化粧(けしょう)をしてあげると、見違えるように立派になります。
12月のよくある質問 (FAQ)
Q. 雪が積もったらどうすればいいですか?
A. ふわふわの雪が乗っている程度なら、「天然の断熱材」となって保湿・保温してくれるので、そのままで大丈夫です。 ただし、湿った重い雪は枝を折る可能性があるので払い落とします。また、雪が溶けてから再凍結するのが一番怖いので、溶け始めたらムロに取り込んでください。
Q. 室内で育てられる盆栽はありませんか?
A. 残念ながら、伝統的な松やモミジなどの盆栽は、冬の寒さを経験しないと春に芽吹きません。 冬の間ずっと室内で楽しみたい場合は、「ガジュマル」などの熱帯性観葉植物を盆栽仕立てにしたものをおすすめします。これなら暖かいリビングでも元気に育ちます。



コメント