新緑が眩しい5月〜6月頃、盆栽棚を最も華やかに彩ってくれるのが「さつき(皐月)」です。 松が「緑の芸術」なら、さつきは間違いなく「色彩の芸術」。
「ツツジと何が違うの?」と聞かれることが多いですが、実はさつきもツツジの仲間です。 しかし、さつきには他の花木にはない唯一無二の特徴があります。 それは、一本の木の中に、白、赤、ピンク、紫、そして複雑な絞り模様など、異なる色の花を同時に咲かせる(咲き分け)ことができる点です。
今回は、品種だけで2,000種以上あると言われる奥深いさつきの世界と、来年も綺麗に咲かせるための決定的なルール「花後の剪定」について解説します。

ツツジとの違いは?
一般的に街路樹で見かける「ツツジ(ヒラドツツジなど)」と、盆栽の「さつき」は以下の点が違います。
- 開花時期: ツツジは4月〜5月、さつきは旧暦の5月(現在の5月下旬〜6月上旬)に咲きます。「皐月(5月)」に咲くからサツキです。
- 葉の硬さ: さつきの方が葉が小さく、硬くて光沢があります。
- 多様性: さつきの方が品種改良が盛んで、花の模様や色が圧倒的に豊富です。
育て方の絶対ルール:土は「鹿沼土」一択!
さつきを育てる上で、これだけは絶対に守らなければならないルールがあります。 それは、「酸性の土」で育てることです。
多くの植物は中性〜弱酸性の土を好みますが、さつきは強い酸性を好みます。 逆に、コンクリートの近くやアルカリ性の土では育ちません。 そのため、さつきの植え替えには、栃木県鹿沼市で採れる「鹿沼土(かぬまつち)」を100%単用(混ぜ物なし)で使うのが鉄則です。 黄色い粒々の土を見たら、「あ、これはさつき用だな」と思って間違いありません。
※諸説ありますので、育てる風土や地域でお調べください。

育て方の基本:水が大好き
さつきは非常に根が細かく、「水食い」と言われるほど水を欲しがります。
1. 水やり
「乾く前にやる」くらいの気持ちでOKです。
- 春・秋: 1日1〜2回
- 夏: 1日2〜3回
- 冬: 2〜3日に1回
水切れを起こすと、すぐに葉がしおれてしまいます。 また、蕾(つぼみ)が膨らんでいる時期に水を切らすと、花が綺麗に開かずに落ちてしまうので、開花期は特にたっぷり与えましょう。
2. 置き場所
日当たりと風通しの良い場所を好みます。 日光にしっかり当てることで、花芽(来年の花の元)がたくさんつきます。 ただし、真夏の西日は強すぎるため、夏場は半日陰に移します。

来年も咲かせるために:「花後の剪定」が命
「今年は綺麗に咲いたけど、翌年は全然咲かなかった…」 これはさつき初心者あるあるですが、原因の9割は「剪定(せんてい)のタイミング」にあります。
さつきは、花が終わった直後の6月下旬〜7月上旬に、来年のための「花芽(はなめ)」を作り始めます。 つまり、夏以降に「枝が伸びたから」といってチョキチョキ切ってしまうと、せっかくできた来年の花芽ごと切り落としてしまうことになるのです。
【正しい手順】
- 花がら摘み: 咲き終わった花は、種ができるのを防ぐため、花首からすぐに摘み取ります。
- 剪定(最重要): 花が全て咲き終わったら、なるべく早く(遅くとも7月上旬までに)全体の枝を短く切り詰めます。
この「花が終わってすぐ」のタイミングさえ逃さなければ、さつきは毎年見事な花を咲かせてくれます。
奥深き「咲き分け」の世界
さつきの最大の魅力は品種の多さです。ここでは代表的な銘花をいくつか紹介します。
- 大盃(おおさかずき): 古くからある強健種。濃いピンク色(紅色)の単色花ですが、花が大きく非常に丈夫です。初心者向けの台木としても使われます。
- 珍山(ちんざん): 小輪(小さい花)がたくさん咲く人気品種。淡いピンク色が愛らしく、枝が細かく分かれるため小品盆栽に向いています。
- 松波(まつなみ): 「咲き分け」の名花。一本の木から白、薄いピンク、濃いピンク、絞り模様など、様々なパターンの花が咲き乱れます。

まとめ:自分好みの花を見つけよう
さつきの品種は数千種類あり、毎年新しい品種が生まれています。 「底白(そこじろ)」といって中心が白いもの、「覆輪(ふくりん)」といって縁取りがあるもの。 まるで着物の柄を選ぶように、自分の感性に合った花を探すのもさつきの楽しみ方です。
丈夫で、切ってもまた芽吹く生命力を持ち、毎年満開の笑顔を見せてくれるさつき。 鹿沼土と水やり、そして「花が終わったらすぐ切る」。これさえ守れば、あなたの期待を裏切ることはありません。



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