長かった雨の季節が去り、いよいよ本格的な夏が到来する7月。カーッと照りつける太陽と、急激な気温上昇は、盆栽たちにとって大きなストレスとなります。
「朝は元気だったのに、夕方帰ってきたらチリチリに枯れていた…」そんな悲劇が最も起こりやすいのがこの時期です。 人間が熱中症対策をするのと同じように、盆栽にも日除けや水分補給といった「夏の装備」が必要です。愛樹を夏の猛威から守り抜くための、7月の鉄則を解説します。
7月に見頃を迎える盆栽
暑さの中でも涼を感じさせてくれる樹種や、夏空に映える鮮やかな花たちが楽しめます。
- 百日紅(サルスベリ) 「百日紅」の名のごとく、夏の間中、フリル状のピンクや白の鮮やかな花を咲かせ続けます。ツルツルとした幹肌も魅力的です。
- 合歓の木(ネムノキ) 夜になると葉を閉じて眠るような姿が愛らしい樹種。7月頃に、刷毛(はけ)のような繊細で淡いピンク色の花を咲かせます。
- 葡萄(ブドウ)・林檎(リンゴ) 花が終わり、小さな実が少しずつ膨らんでくる様子が観察できます。秋の収穫に向けた期待が高まる時期です。

置き場所:日除け(寒冷紗)の出番
7月の直射日光は強烈すぎます。特に西日は盆栽にとって「毒」にもなり得ます。
- 「半日陰」を作る 午前中は日が当たり、午後(特に西日)は日陰になる場所が理想です。もし移動できない場合は、よしずや寒冷紗(かんれいしゃ:遮光ネット)を使って、人工的に日陰を作ってあげてください。遮光率は50%程度が目安です。
- 照り返し防止 コンクリートやベランダの床に直接鉢を置くと、フライパンの上で焼かれている状態になります。必ず棚やスノコの上に置き、地面からの熱気を避けてください。
- 風通し 蒸れを防ぐために風通しは重要ですが、室外機の熱風が直接当たる場所は厳禁です。一瞬で乾燥して枯れてしまいます。

水やり:1日3回!?水切れとの戦い
7月〜8月は、盆栽管理の中で最も水やりの回数が多くなる時期です。
- 頻度:1日2回〜3回
- 朝(必須): 完全に日が昇って暑くなる前(7時〜8時頃まで)にたっぷりと。
- 夕方(必須): 日が沈みかけ、気温が下がり始めた頃にたっぷりと。
- 昼(状況により): 小さい鉢(ミニ盆栽)は、昼には乾いてしまうことがあります。昼間にあげる場合は、鉢の中でお湯にならないよう、日陰に移してから与えるか、土の温度を下げるつもりで大量に水を流し込んでください。
- 葉水(はみず)の効果 夕方の水やり時に、根元だけでなく、葉っぱや棚板、周囲の地面にも水を撒く「打ち水」を行うと、気化熱で周囲の温度が下がり、盆栽が夜間にクールダウンできます。

肥料:夏バテ防止で「ストップ」
人間と同じく、盆栽も暑すぎると食欲が落ちます。
- 基本は中止 真夏に肥料を与え続けると、根が負担を感じて傷んでしまうことがあります(夏バテ)。7月に入ったら、置いてある固形肥料は一旦すべて取り除きましょう。
- 例外 成長が旺盛な若い木や、これから実を太らせる実物盆栽には、ごく薄めた液体肥料を週に1回程度与える場合もありますが、基本は「夏休み」でOKです。
害虫対策:乾燥を好むハダニ
雨が少なく乾燥した日が続くと、ハダニ(赤ダニ)が大量発生します。
- 症状: 葉の色がなんとなく悪くなり、カスリ状に白っぽく色が抜けます。
- 対策: ハダニは水に弱いため、水やりの際に葉の裏側から勢いよく水をかける(葉水)ことで予防・駆除できます。ひどい場合は専用の殺ダニ剤を使用します。
樹種別の作業:黒松の「芽切り」
7月の盆栽界における最大のイベント、それが黒松の「芽切り(めきり)」です。

黒松:短葉法(たんようほう)の要
春から伸びてきた新しい芽を、7月にハサミで短く切り取ってしまいます。

- なぜ切るのか?:今切ることで、切った場所から再び新しい芽(二番芽)が出ます。この二番芽は、秋までの短い期間しか成長できないため、「葉が短く揃った」美しい姿になります。
- 時期:
- 弱い芽:7月上旬
- 中くらいの芽:7月中旬
- 強い芽:7月下旬
- ※弱い芽から先に切ることで、二番芽が出るタイミングを揃え、全体のバランスを整えます。
雑木類:葉焼け対策
モミジなどは、強い日差しで葉の縁が茶色く枯れる「葉焼け」を起こしやすいです。日除けの下で管理し、美しさを保ちましょう。

7月のよくある質問 (FAQ)
Q. 旅行で2〜3日家を空けます。水やりはどうすれば? A. 夏の水切れは致命的です。以下の対策を組み合わせてください。
- 腰水(こしみず): トレイに浅く水を張り、鉢底を浸しておく。
- 自動散水機: タイマーで水が出る機械を導入する(長期ならこれが一番安全)。
- 日陰へ移動: お風呂場(窓際)や玄関内など、直射日光が当たらず風通しの少ない場所へ移動し、水分の蒸発を遅らせる。
Q. 昼間に水をやると、お湯になって根が煮えるというのは本当ですか?
A. 昔から言われていますが、半分正解で半分間違いです。「中途半端な量」をあげると、鉢の中で水がお湯になり根を傷めます。しかし、「鉢底から冷たい水が出るまで大量に」あげれば、鉢内の温度を一気に下げることができるので、むしろプラスになります。しおれかけているなら、昼間でも迷わず大量の水をあげてください。



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