葉透かし(はすかし)完全ガイド。木の「懐(ふところ)」を守る、盆栽の大切な衣替え

葉透かし お手入れ
葉透かし

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「せっかく葉っぱが茂って元気そうなのに、減らしてしまうのはかわいそう…」

青々と茂った盆栽を見ると、そう思うのが自然かもしれません。 しかし、盆栽の世界では「茂りすぎ=危険信号」と考えます。

外側が葉で覆い尽くされると、木の内部(これを「懐(ふところ)」と呼びます)に太陽の光が届かなくなり、風通しも悪くなります。 その結果、何が起こるでしょうか?

大切な懐の小枝が枯れ落ち、内部がスカスカになり、カビや害虫の温床になってしまうのです。

この記事では、盆栽の健康維持に不可欠な「葉透かし」の目的と、樹種によって全く異なる実践方法(松の「もみあげ」と雑木の「葉切り」)について解説します。


1. 葉透かし(はすかし)とは?なぜ必要なの?

葉透かしとは、その名の通り「混みすぎた葉を間引いて、隙間(透かし)を作る作業」のことです。

目的は、見た目をスッキリさせることだけではありません。最大の目的は「懐(ふところ)の枝を守ること」にあります。

「懐(ふところ)」が枯れる恐怖

盆栽の理想的な樹形は、幹に近い内側(懐)にも細かい小枝がびっしりと付いている状態です。 しかし、植物は「光が当たらない場所の枝葉は不要」と判断して、自ら枯らしてしまう性質があります。

一度枯れてしまった懐の枝は、二度と元には戻りません。 外側だけモコモコで、中を覗くと枯れ枝だらけ…という悲劇を防ぐために、意識的に内部へ光と風を届けてあげる必要があるのです。

  • メリット1:日照確保(懐の枝枯れを防ぐ)
  • メリット2:風通し改善(蒸れを防ぎ、病害虫を予防する)
  • メリット3:エネルギー分散(強い部分の力を抑え、弱い枝に力を回す)

2. 【松柏類】の葉透かし(もみあげ・古葉取り)

黒松や五葉松などの松柏類(しょうはくるい)の葉透かしは、別名「もみあげ」「古葉取り(ふるはとり)」と呼ばれます。

松の葉は数年間ついていますが、古くなると光合成の効率が落ちて役立たずになります。この古い葉を強制的に取り除く作業です。

  • 最適な時期: 冬(11月下旬 ~ 1月頃)
    • 木が休眠しており、作業のダメージが少ない時期に行います。

実践!松の「もみあげ」手順

松の葉透かしには、基本的にハサミは使いません。「ピンセット」を使います。

手順1:古い葉を見極める 枝の先端についている、青々とした元気な葉が「今年生えた葉(新葉)」です。 それよりも幹側(奥側)についている、少し色がくすんだ葉が「去年の葉(古葉)」です。この古葉がターゲットです。

手順2:ピンセットで抜く 古葉の付け根をピンセットで挟み、葉が生えている方向(枝先方向)に向かって、スッと引き抜きます。 ※逆方向に引っ張ると、枝の皮が剥がれて木を傷めるので注意してください。

手順3:新葉の量を調整する(もみあげ) 古葉を全部取ったら、残った新葉の量も調整します。 勢いの強い枝は葉を少なく(例えば3対6枚残す)、弱い枝は多めに(5対10枚残す)残すことで、木全体の力のバランスを均一にします。

葉透かし
葉透かし

3. 【雑木類】の葉透かし(葉切り・葉刈り)

もみじ、カエデ、ケヤキなどの雑木類(ぞうきるい)は、春から夏にかけて爆発的に葉が茂ります。 放っておくと内部が真っ暗になり、梅雨時には蒸れてうどんこ病などの原因になります。

  • 最適な時期: 梅雨入り前(6月頃) または 秋口(9月頃)
    • 葉が固まって、混雑がピークに達した頃に行います。

実践!雑木の「葉透かし」手順

雑木類はハサミを使います。 すべての葉を落とす「葉刈り(全葉刈り)」という荒療治もありますが、ここでは初心者が安全に行える「部分的な葉透かし」を紹介します。

手順1:外側の「大きな葉」を狙う 木の輪郭を作っている、外側の特に大きな葉っぱを探します。これらが傘のように内部への光を遮っています。

手順2:葉柄(ようへい)を残して切る 大きな葉を、専用の芽切りバサミなどで切り落とします。 この時、葉っぱ本体だけを切り、枝とつながっている「軸(葉柄)」の部分は残すのがコツです。残った軸は、後で自然にポロリと落ちます。

手順3:向こう側が見える程度に 全体のバランスを見ながら、混み合っている部分の葉を間引いていきます。 目安は、木を透かして見た時に「向こう側の景色がチラチラと見えるくらい」です。風がスッと通り抜けるイメージになれば成功です。

モミジの葉透かし
モミジの葉透かし

まとめ:風通しは健康のバロメーター

葉透かしは、人間でいえば「衣替え」や「散髪」のようなものです。 夏に向けて涼しい格好をさせ、冬に向けて余計な服を脱がせて日光浴をさせる。

作業の前と後では、木の印象がガラリと変わります。 ボサボサだった木が、スッキリと散髪した後のように涼しげな姿になるのは、見ていてとても気持ちが良いものです。

「懐(ふところ)に光と風を。」 この合言葉を胸に、勇気を出して混み合った葉を透かしてあげましょう。それが、盆栽を健康に長生きさせるための愛情表現なのです。


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