日差しが柔らかくなり、いよいよ本格的な春が到来する3月。沈黙を守っていた盆栽たちも、一斉に新芽をほころばせ活動を開始します。
この時期は、盆栽愛好家にとって一年で最も忙しく、そして最も楽しいシーズンの始まりです。春の強風による乾燥や、成長を助けるための植え替えなど、3月ならではの重要なケアについて解説します。
1. 見頃の盆栽
3月は「開花」と「芽吹き」の両方が楽しめる贅沢な月です。
- 桜(サクラ):日本の春の象徴。3月下旬頃から、一才桜や旭山桜などが満開を迎えます。
- 花桃(ハナモモ):鮮やかなピンクや赤の花が、ひな祭りの時期を彩ります。
- 連翹(レンギョウ):目の覚めるような黄色い花が、枝いっぱいに咲き乱れます。
- 楓・紅葉(カエデ・モミジ):花ではありませんが、赤や緑の愛らしい「新芽」が開く瞬間は、花にも負けない美しさがあります。

置き場所:屋外デビューと「戻り寒波」への警戒
暖かくなってきたら、冬の間保護していた樹も屋外へ出し、日光と風に当てて「春が来たこと」を教えます。
- 基本: 日当たりと風通しの良い屋外で管理します。日光を浴びることで、元気な新芽が育ちます。
- 注意点(遅霜): 3月は「寒の戻り」で急に冷え込む日があります。特に夜間の霜に当たると、せっかく出た柔らかい新芽が枯れてしまいます。氷点下になりそうな夜だけは、軒下や玄関に取り込む配慮が必要です。
水やり:春の風は乾く!回数を増やす

樹が水を吸い上げ始め、さらに春特有の強い風が吹くため、鉢土が急速に乾きやすくなります。
- 頻度: 1日1回が目安です(状況により2日に1回)。
- 注意点: 表面が乾いていたら、鉢底から抜けるまでたっぷりと与えます。
- 水切れ対策: 「春一番」のような強い風が吹く日は、あっという間に水分が蒸発します。朝にあげても夕方にはカラカラになることがあるため、こまめな観察を心がけてください。
肥料:目覚めのエネルギーを補給

新芽が動き出すこの時期から、本格的に施肥(せひ)を開始します。
- 対象: 植え替えをしていない樹。
- 種類: 固形の有機肥料(油かすなど)を鉢の隅に置くか、薄めた液体肥料を与えます。
- 注意: 今月「植え替え」をする樹には与えないでください。 植え替え直後の弱った根に肥料を与えると、根が焼けて枯れる原因になります(肥料は植え替え1ヶ月後から再開します)。
消毒:虫たちも目覚める季節
暖かくなると、アブラムシなどの害虫も活動を始めます。
- 予防: 虫が見えなくても、殺菌殺虫剤(スミチオンやベニカなど)を散布しておくと安心です。
- 注意: 2月まで使っていた強力な「石灰硫黄合剤」は、新芽が出ている樹には強すぎて薬害が出るため使用を控えます。
樹種別の作業:植え替えのピーク
2月に続き、3月は松柏類(松など)や雑木類、実物など、ほとんどの盆栽の植え替え適期です。
- タイミング: 「芽が動く直前〜少し開き始めた頃」がベストです。
- 頻度:
- 松柏類:3〜5年に1回
- 雑木・花物:1〜2年に1回
- 根の処理: 古い土を落とし、黒ずんだ古い根や長く伸びすぎた根を切り詰めることで、新しい細かい根の発達を促します。
3月のよくある質問 (FAQ)
Q. 植え替えをした後の水やりの仕方は?
A. 植え替え直後は、根と新しい土が馴染んでいません。最初の水やりは、鉢底から出る水が透明になるまで徹底的に行い、微塵(土の粉)を洗い流してください。その後2週間ほどは風の当たらない場所で管理し、絶対に水切れさせないよう注意します。
Q. 桜の盆栽を買いましたが、花が終わったらどうすればいいですか?
A. 花が散り終わったら、花がら(花の残りカス)をこまめに取り除きます。そのままにしておくと病気の原因になります。また、花が終わった直後に枝を剪定し、来年のための樹形を整えるのが一般的です。



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