爽やかな風が吹き抜け、盆栽たちが一年で最も生き生きと輝く5月。新芽が開ききり、淡い緑色だった葉が、徐々に濃く美しい「深緑(ふかみどり)」へと変化していく季節です。
5月は、人間にとっては過ごしやすい季節ですが、盆栽にとっては「爆発的な成長」による樹形の乱れや、活動期ならではの「害虫」との戦いが始まる月でもあります。美しい姿をキープするための、5月ならではの管理ポイントを解説します。
見頃の盆栽
5月は「葉」の美しさが際立つ季節ですが、遅咲きの花もの盆栽も見逃せません。
- 皐月(サツキ) 5月の主役といえばサツキです。その名の通り旧暦の5月(皐月)に満開を迎えます。品種によって多様な色彩を楽しめ、盆栽界が最も華やぐシーズンの一つです。
- 藤(フジ) 4月下旬から5月上旬にかけて、紫や白の花房が満開になります。風に揺れる姿は日本の初夏の象徴です。
- ピラカンサ・カリン 秋の実りのために、白や薄ピンクの小ぶりな花を咲かせます。この時期の受粉が秋の鑑賞期を左右します。

置き場所:日差しの強まりに注意
5月の日差しは、真夏に近い強さになることがあります。
- 基本は屋外 引き続き、日当たりと風通しの良い屋外で管理します。日光をたっぷり浴びせることで、間延びを防ぎ、引き締まった枝を作ります。
- 鉢の向きを変える 成長が早いため、太陽に向かって枝が偏りやすくなります。1週間〜2週間に一度、鉢の向きを180度回転させ、満遍なく日が当たるようにしてください。
- コンクリートの照り返し 気温が25度を超える日も出てきます。直置きは避け、棚の上で管理するなどして、地面からの熱気や照り返しを防ぎましょう。

水やり:回数を増やして水切れを防ぐ
気温の上昇とともに、葉からの蒸散量が増え、土が乾くスピードが格段に早くなります。
- 頻度:1日1回〜2回 基本は朝にたっぷりと。夕方に土の表面が乾いているようなら、夕方にも水を与えます。
- サツキの水やり注意点 花が咲いているサツキの場合、花弁に直接水をかけると花が傷んで早く散ってしまいます。ジョウロの先を株元に向け、土に優しく注ぐようにしてください。
肥料:成長を加速させるエネルギー
ほとんどの樹種で成長が旺盛になるため、肥料をしっかり効かせます。
- 基本: 固形の有機肥料などを置き肥します。水やりのたびに養分が溶け出し、持続的に効きます。
- 花もの(開花中): 花が咲いている間は肥料を控えます。花が終わってから「お礼肥(おれいごえ)」を与えてください。
消毒:害虫の本格シーズン到来
暖かくなると、アブラムシやカイガラムシ、ハダニなどの害虫が活発になります。
- 予防: 月に1〜2回、殺虫殺菌剤(スミチオン、マラソンなど)を散布します。
- 観察: 葉がベタベタしていたり、変形していたりする場合は害虫のサインです。見つけ次第、ブラシで落とすか薬剤で駆除しましょう。
樹種別の作業:「芽摘み」と「針金掛け」
5月は、伸びすぎたエネルギーをコントロールする「芽摘み(めつみ)」や、柔らかい枝を曲げる「針金掛け」の適期です。

松柏類(黒松・五葉松など)
- ミドリ摘み(芽摘み): 松類は「ミドリ(キャンドル)」と呼ばれる新芽がツンと伸びてきます。この勢いを均一にするため、長く伸びた強い芽を半分〜3分の1ほど手で折り取ります。ハサミを使うと切り口が茶色くなるため、必ず手で行ってください。
雑木類(モミジ・カエデなど)
- 芽摘みの継続: 放っておくと枝が長く伸びてしまうため、新芽が伸びたら「1〜2節」を残して先端を摘み取ります。これを繰り返すことで、小枝の多い繊細な樹形になります。
- 針金掛け: 新しい枝(新梢)はまだ柔らかく、曲げやすいため、この時期に針金を掛けて樹形を整える「芽押さえ(めおさえ)」を行うと効果的です。
花もの(サツキ・藤など)
- 花がら摘み: 咲き終わった花をそのままにすると、実を付けることにエネルギーを使ってしまいます。来年も咲かせるために、終わった花はこまめに摘み取ってください。
5月のよくある質問 (FAQ)
Q. 葉に白い粉のようなものが付いています。
A. 「うどんこ病」の可能性があります。5月〜6月の湿度が上がる時期に発生しやすい病気です。白い粉を吹いたような葉を見つけたら、すぐに取り除き、専用の殺菌剤(サプロールなど)を散布して拡大を防いでください。
Q. 松の芽摘みは必ずやる必要がありますか?
A. 樹形を維持したい場合は必須です。行わないと枝が間延びし、下の枝の日当たりが悪くなって枯れてしまうこともあります。ただし、まだ木を大きく育てたい段階の「養成木(ようせいぼく)」であれば、あえて摘まずに伸ばして太らせる場合もあります。



コメント