盆栽を種から育てる「実生(みしょう)」に挑戦しませんか?今回は黒松・赤松・五葉松の3種類の種まき方法を解説。種の入手方法から、発芽率を上げる「水選別」、土の選び方まで、初心者が失敗しない手順をまとめました。
はじめに:種から育てる「実生(みしょう)」のロマン
盆栽を始める方法はいくつかありますが、一番愛着が湧くのは、間違いなく「種から育てること(実生)」です。
小さな種が土を割って出てくる瞬間の感動。 そして、その小さな芽が10年、20年かけて大木のような姿になっていく過程。 まさに「盆栽の醍醐味」がそこに詰まっています。
今回は、盆栽界の「御三家」とも言える「黒松」「赤松」「五葉松」の種まきにチャレンジします。 「難しそう…」と思うかもしれませんが、実は松の種まきは、手順さえ守れば初心者でも十分に発芽させることができます。
春の芽吹きに向けて、今から準備を始めましょう!

1. 黒松・赤松・五葉松の違いを知ろう
種をまく前に、それぞれの特徴を少しだけ知っておくと、育てがいが増します。
- 黒松(クロマツ)
- 特徴: 「男松(オマツ)」とも呼ばれ、荒々しい樹皮と太い針金のような葉が特徴。丈夫で成長が早く、初心者が最初に挑むのに最も適しています。
- 実生の魅力: 成長が早いので、数年で「盆栽らしい姿」になりやすいです。
- 赤松(アカマツ)
- 特徴: 「女松(メマツ)」と呼ばれ、柔らかい葉と、赤みを帯びた美しい樹皮が特徴。優雅な立ち姿が魅力です。
- 実生の魅力: 繊細な曲線をつけた「文人木(ぶんじんぎ)」などを目指すのに最適です。
- 五葉松(ゴヨウマツ)
- 特徴: 短い葉が5本セットで出るのが特徴。成長はゆっくりですが、緻密で風格があります。盆栽界の貴族のような存在です。
- 実生の魅力: 一般的に五葉松は「接ぎ木」で増やされることが多いですが、種から育てた「実生五葉松」は非常に希少で価値が高いです。
2. 準備するもの(3月までに揃えよう)
種まきの適期は、桜が咲く頃(3月中旬〜4月上旬)です。 それまでに以下の道具を揃えておきましょう。
① 種(たね)
- ネット通販や、盆栽園で購入できます。
- 1月〜2月は在庫が豊富な時期です。「実生用 黒松の種」などで検索してみましょう。
- ※自分で公園で拾った松ぼっくりからも採れますが、発芽率は市販品の方が安定しています。
まず手始めにとして考えるならば黒松です。ブランド松でなければ安価に手に入ります。
② 土(用土)
- 赤玉土(極小粒〜小粒): 清潔な新しい土を使います。
- バーミキュライト: 保水性が高く、種まき用土として非常に優秀です。赤玉土と半々で混ぜてもOKです。
- ※「種まき用の土」として売られている市販の培養土でも大丈夫です。
植えるのが数粒程度ならば少量でokです。がっつり植え込むのであれば近くの園芸用品が売っているところで買った方が圧倒的に安いです。
③ 容器
- ザル(キッチン用): 実はこれが最強です。水はけが良く、酸素が入りやすいので根がよく育ちます。
- 育苗箱(いくびょうばこ): 黒いプラスチックのトレイ。底に穴が空いているものを選びましょう。
- 駄温鉢(だおんばち): 平たい浅めの鉢も雰囲気が良いです。
拘ればだんだんと値段が上がります。最初は多少見栄えが悪くでもコスパ重視でもよいのかもしれません。
3. 【重要】種まき前の儀式「水選別」
種を手に入れたら、すぐに撒いてはいけません。 発芽率を劇的に上げるための「水選別(みずせんべつ)」という作業を行います。
- コップに水を入れ、その中に種をすべて入れます。
- そのまま一晩(24時間)放置します。
- 翌日見ると、「沈んでいる種」と「浮いている種」に分かれます。
- 沈んだ種: 中身が詰まっている「良い種」。これを撒きます。
- 浮いた種: 中身がスカスカの「しいな(発芽しない種)」。残念ですが取り除きます。
この作業で、無駄な種を撒く手間を省き、元気な種だけを選抜します。 ※五葉松は殻が硬いため、2日ほど水につけておいても良いでしょう。
4. いざ実践!種まきの手順
いよいよ種まき本番です。
STEP1:土を入れる
容器に土を入れます。水やりをした時に土が流れ出ないよう、容器の縁から1〜2cm下くらいまで入れます。一度たっぷりと水をかけ、微塵(みじん)を洗い流して土を湿らせておきます。
STEP2:種を配置する(ばら撒き vs 点撒き)
- ばら撒き: パラパラと全体に撒く方法。自然な林のような景色を作りたい時に。
- 点撒き: 指やピンセットで、2〜3cm間隔で等間隔に置いていく方法。後の植え替えが楽です。
個人的には、管理しやすい「点撒き」をおすすめします。 種は「横向き」に寝かせて置くのがコツです。
STEP3:土を被せる(覆土)
種の上に、薄く土を被せます。 厚さは「種の大きさの2〜3倍(約5mm〜1cm)」が目安です。 深すぎると芽が出てこられず、浅すぎると乾燥してしまいます。
STEP4:優しく水やり
最後に、ジョウロのハス口を上に向けて、霧雨のように優しく水をかけます。 勢いよくかけると種が流れてしまうので注意してください。
5. 発芽までの管理とアフターケア
種を撒いてからが本当の勝負です。
- 置き場所: 発芽までは「日陰〜半日陰」で乾かないように管理します。
- 水やり: 土の表面が乾かないように、毎日霧吹きなどで優しく水を与えます。
- 発芽後: 2週間〜1ヶ月ほどで、可愛い芽が土を持ち上げて出てきます(これが「松葉」の赤ちゃんです!)。芽が出たら、徐々に日当たりの良い場所に移動させ、日光をたっぷり浴びせて茎を太くします。
まとめ:春が待ち遠しい!
黒松、赤松、五葉松。 それぞれ違う個性を持つ種たちが、同じ日に撒かれ、同じ水を飲んで育っていく。 そして数年後には、全く違う姿の盆栽に成長しているはずです。
種まきは、失敗しても金銭的なダメージが少ないのが良いところ。 もし半分枯れてしまっても、残りの半分が育てば十分です。
「盆栽を種から育てている」 そう言えるだけで、盆栽ライフの深みが一気に増しますよ。 ぜひこの春、小さな種のパワーを感じてみてください。




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