日中はまだ汗ばむ陽気が続きますが、朝晩の風にふと秋の気配を感じる9月。盆栽たちも、過酷だった夏の暑さを乗り越え、ホッと一息ついている頃です。
しかし、ここで油断は禁物です。9月は台風の特異日が多く、強風対策が欠かせません。また、来るべき冬、そして来春の芽吹きに備えて、木にしっかりと力を蓄えさせる「食欲の秋(肥料やり)」がスタートします。夏モードから秋モードへ、管理を切り替えるための9月の作業を解説します。
9月に見頃を迎える盆栽
派手さはありませんが、秋の訪れを告げる風流な植物たちが楽しめます。
- 萩(ハギ) 「秋の七草」の一つ。しなやかに垂れた枝先に、赤紫や白の小さな花を咲かせます。風に揺れる姿は日本の秋そのものです。
- 実物類(カリン・ロウヤガキなど) まだ緑色ですが、実がしっかりと固まり、少しずつ色づく準備を始めています。実の重みで枝が下がってくる様子に、充実した秋を感じられます。
- 白紫檀(シロシタン) 春の白い花が終わり、秋には真っ赤な実をつけます。9月頃から実が赤く色づき始め、緑の葉とのコントラストが美しくなります。

置き場所:日差しの変化と台風

太陽の角度が変わり、日差しの質が少しずつ柔らかくなってきます。
- 日除け(寒冷紗)の調整
- 上旬〜中旬: まだ残暑が厳しいため、日除けは継続します。
- 下旬以降: お彼岸(9月20日頃)を過ぎて涼しくなってきたら、徐々に日除けを外します。曇りの日から少しずつ直射日光に慣らし、秋の陽光をたっぷり浴びせて光合成を促します。
- 台風対策(最重要) 8月に続き、台風シーズン本番です。
- 予報が出たら、早めに棚から降ろし、風の当たらない場所へ避難させます。
- 実がついている盆栽は、強風で実が落ちてしまう(落果)リスクが高いため、特に優先して保護してください。
水やり:回数を減らしていく
気温の低下とともに、水の乾き方もゆっくりになります。
- 頻度:1日1回〜2回
- 真夏のように「1日3回必須」ではなくなります。
- 基本は朝1回たっぷりと。夕方は土の乾き具合を見て、乾いていれば与えます。
- 注意点: 「乾いていないのに惰性で毎日夕方に水をやる」と、根腐れの原因になります。必ず土を見て判断してください。
肥料:「秋の肥培(ひばい)」スタート
9月の最重要作業です。夏の間ストップしていた肥料を再開します。
- 目的:
- 夏バテで消耗した体力の回復。
- 冬を越すためのエネルギー貯蔵。
- 幹や枝を太らせる(充実させる)。
- 方法: 固形の有機肥料などを鉢の隅に置きます。最初は少なめにし、徐々に規定量に戻していきます。 ※ただし、植え替え直後の木や、極端に弱っている木には与えないでください。
害虫対策:秋の毛虫に注意
涼しくなると、また違った虫たちが活動を始めます。
- ハマキムシ(葉巻虫) 葉っぱをクルクルと巻いて、その中に潜むイモムシです。巻かれた葉を見つけたら、すぐに手で潰すか取り除いてください。
- 秋の殺菌・殺虫 冬になる前に、一度全体に薬剤散布(スミチオンやダイセンなど)をしておくと、害虫や病気の越冬を防げます。
樹種別の作業:五葉松の「古葉取り」

9月は、五葉松(ゴヨウマツ)を美しく整えるための適期です。
五葉松:古葉取り(ふるはどり)
前年以前に生えた「古い葉(古葉)」が茶色くなってくる時期です。これを手入れします。
- 方法: 茶色くなった古い葉や、枝の内側にあって日が当たらない葉を、ピンセットや指で抜き取ります。
- ハサミを使う場合: 葉の付け根(ハカマ)を残して切る方法もあります(初心者におすすめ)。
- 効果:
- 風通しと日当たりが良くなり、内側の芽が育つ。
- カイガラムシなどの害虫予防になる。
- 見た目がスッキリして清潔感が出る。
雑木類:徒長枝(とちょうし)の剪定
夏場にビュンビュンと長く伸びてしまった枝(徒長枝)があれば、輪郭に合わせて切り戻します。これを行うことで、内部の小枝に力が分散され、冬のシルエットが美しくなります。

9月のよくある質問 (FAQ)
Q. いつから日除けを外せばいいですか?
A. 目安は「お彼岸(9月20日〜23日頃)」です。最高気温が25度〜28度くらいに落ち着いてきたら、外しても大丈夫です。ただし、急に外すと葉焼けすることもあるので、曇りの日を選んで外すか、午前中だけ日に当てるなど、1週間くらいかけて慣らすのが理想です。
Q. 台風で実が落ちてしまいました…。
A. 残念ですが、落ちた実は元には戻りません。しかし、木にとっては「実を育てる負担」が減ったことになるため、来年に向けて栄養を蓄えるチャンスとも言えます。落ち込まずに、肥料(お礼肥)をしっかり与えて、来年の結実を目指しましょう。



コメント