種から盆栽を育てる、その第一歩
盆栽を種から育てる「実生(みしょう)」は、いちばん小さな一粒から、自分だけの木を育てていく楽しみがあります。苗を買うのとは違い、発芽の瞬間から立ち会えるのが魅力です。
とはいえ、いざ始めようとすると「何をそろえればいいの?」「いつまくの?」「どう管理するの?」と、分からないことばかり。この記事では、黒松(くろまつ)と五葉松(ごようまつ)を種から育てるための準備と、初心者がつまずきやすい注意点を、順を追ってお伝えします。この2つは実生の定番で、初心者にも育てやすい樹種です。
はじめに一つだけ。実生は、思い通りにいかないこともある、自然相手の営みです。全部の種が芽を出すわけではないし、成長のペースもバラバラ。でも、だからこそ芽が出たときの喜びは格別です。気楽に、気長に始めてみてください。
まずそろえるもの
実生に必要なものは、そんなに多くありません。
種。黒松、または五葉松の種を用意します。園芸店やネットで購入できます。採取した年の新しい種のほうが発芽率が高いので、なるべく新しいものを選んでください。
産地ブランドがなければ100粒で2000円程でネット購入できます。
まく容器。少しだけ育てるならプレステラ90のような育苗ポットが、たくさん育てるなら発泡スチロール箱が使いやすいです(詳しくは後述します)。


可愛い盆栽鉢にまくのも楽しいかもしれませんね。湯呑でも盆栽鉢の代わりになりますが、底に1円玉程度の穴を開けて鉢底ネットを針金で留めてください
用土。赤玉土の細粒〜小粒を主体にした、水はけのよい土を使います。種まき専用の土でも構いません。肥料は絶対に入れないでください。

その他。水やり用のジョウロ(できれば目の細かいハス口のもの)、鉢底ネット(プレステラならば無くて大丈夫です)。このくらいです。
特別な道具はいりません。まずは種と土と容器があれば始められます。
強いて言うのであれば土は硬度がある良い土赤玉土を推奨します。安い赤玉土は段々と崩れていき、途中で水はけが非常に悪くなります。お勧めは二本線ブランドの赤玉土です。
14Lで2,000円程とややお高めですが、安い土で後々後悔するよりは良いかと思います。私は後悔しました。
容器の選び方|量で決める
まく容器は、育てたい数で選ぶと失敗しません。
少量なら、プレステラ90という育苗ポットがおすすめです。土がそこそこ入るので乾きにくく、水やりの失敗が減ります。根が鉢の内側をぐるぐる巻く「サークリング現象」も起きにくいと言われていて、少数を大事に育てるのに向いています。

大量なら、発泡スチロール箱が便利です。安価で、たくさんの苗を省スペースにまとめられます。断熱性があるので、冬の寒さから苗を守るのにも役立ちます。底に水抜きの穴を開けて使ってください。数十粒以上まくなら、こちらが管理も楽です。
発泡スチロール箱はネットが買えば凄い高い送料を取られるので、ご近所のスーパーから貰うかホームセンターで買いましょう。
松は根がまっすぐ下に伸びる「直根(ちょっこん)」を出すので、どちらを選ぶにしても、ある程度の深さがある容器を選ぶのがコツです。浅すぎる容器は根が窮屈になります。10~15cm程度の土が入る容器にしましょう。
まく時期|春が基本です
種をまく時期は、春(3月中旬〜4月)が基本です。


この時期にまくと、気温の上昇とともに芽がそろって出て、そこから丸ごと一シーズン、暖かい時期に伸び伸びと育てられます。発芽率も生育もいちばん良い時期です。
秋にまくこともできますが、発芽した幼い苗がそのまま冬に向かうため、寒さで傷むリスクがあります。よほどの理由がなければ、初心者はまず春まきから始めるのが安全です。
春にまく場合は【休眠打破】低温湿潤処理が必要となりますのでご注意ください。私は自然に任せた低温湿潤処理をさせるので、今年は11月中旬以降にまく予定です。気温が予想通りならば3月下旬ごろの気温と同じなので、秋に発芽せずに春先に目が出る算段です。
ちなみに350×500の育成パレット2~3枚に150粒をまく予定です。プレステラ90ならば同サイズのパレットに24個、150枚まくのに7枚が必要となります。

まき方の手順と注意点
準備ができたら、いよいよ種まきです。手順と、そこでの注意点を見ていきます。
種を水に浸ける。まく前に、種を一昼夜(半日〜1日)水に浸けておきます。こうすると発芽がそろいやすくなります。このとき、水に浮いてくる種は中身の詰まっていない「しいな」であることが多いので、取り除きます。沈んだ種だけをまくと、発芽率が上がります。
私は100倍に希釈したメネデール水溶液につけます。通常の水との発芽率の差は不明ですが、おまじない的なものです。(挿し木や種蒔き後でも使用するのであって困るものではありません)
用土に浅くまく。水はけのよい用土を容器に入れ、種を並べます。種の間隔は1.5〜2cmほど空けてください。ぎゅうぎゅうに詰めると、発芽後に蒸れて病気が出やすくなります。プレステラ90ならば1つの容器に1粒をお勧めします。
覆土は浅く。種の上にかける土は、種が隠れる程度(5mm〜1cm)で十分です。深く埋めすぎると、芽が地上に出られず発芽できません。ここは初心者がやりがちな失敗なので、「かけすぎない」を意識してください。
水やり。まいたあとはたっぷり水をやり、発芽までは土の表面を乾かさないように管理します。乾いてはまた濡らす、を繰り返すと発芽が止まってしまいます。かといって水浸しは種が腐るので、「常に湿っているが過湿ではない」状態を保ちます。
発芽までの管理|地温と湿り気がカギ
まいてから発芽まで、黒松なら2〜4週間ほどです。この間の管理で気をつけることは二つです。
一つは地温。発芽には土の温度が大切で、20℃前後がよく発芽します。春まきなら、これから暖かくなっていくので自然に条件が整います。だから春まきが良いのですね。
二つは湿り気。前述の通り、発芽までは土の表面を乾かさないこと。明るい場所(発芽までは直射でなくてよい)に置いて、土の乾き具合を見ながら水やりを続けます。
芽が出るまでは、変化がなくて不安になるかもしれません。でも、土の中では種が動き出しています。焦らず、乾かさないように見守ってください。
発芽したら|立枯病に注意
無事に芽が出たら、いちばん気をつけたいのが立枯病(たちがれびょう)です。
これは、発芽したばかりの幼い苗が、地際でぱたっと倒れて枯れてしまう病気です。せっかく芽が出たのに、という悲しい失敗なので、しっかり防ぎたいところ。
防ぐポイントは三つ。まきすぎて密にしないこと、風通しをよくすること、過湿にしないこと。種の間隔を空けてまくようにとお伝えしたのは、この立枯病を避けるためでもあります。新しい清潔な用土を使うことも、病気の予防になります。
発芽後は、明るくて風通しのよい場所に置いてやってください。ひょろひょろに伸びる「徒長」を防ぐためにも、光は大切です。
黒松と五葉松、それぞれの注意点
最後に、この2つの樹種それぞれの、育てるうえでの注意点をお伝えします。
黒松の注意点
黒松は生育が旺盛で、発芽してからぐんぐん育ちます。成長が目に見えて分かるので、実生の楽しさを味わいやすい樹種です。初めての実生には、この黒松がおすすめです。



注意点は、過湿を嫌うこと。黒松は水はけのよい環境を好むので、水のやりすぎに気をつけてください。発芽後は、やや乾かし気味に管理するくらいでちょうどよいです。じめじめさせると根を傷めます。
なお、発芽してしばらくすると、いちばん下の細い葉(子葉)が茶色くなって枯れてきますが、これは心配いりません。仮の葉が役目を終えて落ちる、正常な生育過程です。上の本葉が元気なら大丈夫です。
五葉松の注意点
五葉松は、黒松に比べて生育がゆっくりな樹種です。発芽も遅め、成長ものんびり。同じ時期にまいても、黒松がぐんぐん伸びるのに対し、五葉松はマイペースです。
ここでの注意点は、「遅くても焦らないこと」。五葉松は、そういう性質の木です。黒松と同じスピードを期待して「うちの五葉松は育ちが悪い」と心配する必要はありません。ゆっくり育つからこそ、あの繊細で上品な姿が生まれます。

そして五葉松も、過湿は苦手です。むしろ黒松以上に水のやりすぎに弱いので、乾かし気味を心がけてください。発芽が遅れても、あきらめずに土を乾かさない程度に管理を続けると、忘れた頃に芽を出してくれることもあります。
まとめ|実生の準備で大事なこと
黒松・五葉松を種から育てる準備について、大事なポイントをまとめます。
- そろえるものはシンプル:種、容器、水はけのよい用土、ジョウロ
- 容器は量で選ぶ:少量はプレステラ90、大量は発泡スチロール箱
- まく時期は春(3月中旬〜4月)が基本
- 種は一昼夜水に浸け、浮いた種は除く。覆土は浅く
- 発芽までは土を乾かさない。発芽後は立枯病に注意
- 黒松は成長が早く初心者向け、五葉松はゆっくりで焦らないのがコツ
- どちらも過湿は禁物。乾かし気味に育てる
準備といっても、難しいことはありません。種と土と容器をそろえて、春を待つ。それだけで実生は始められます。小さな種から芽が出て、少しずつ木になっていく——その過程は、何度体験しても感動があります。ぜひ、あなたも一粒から始めてみてください。一緒に、実生の楽しさを味わっていきましょう。



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