半年待って、やっと芽が出ました
盆栽を種から育てる「実生(みしょう)」をやっていると、教科書通りにいかないことばかりです。今回はその「いかない」体験を二つ、実際の様子とあわせてお伝えします。
一つめは、発芽の時期は思っている以上にバラバラだということ。二つめは、樹種が違うと成長スピードがまるで違うということ。どちらも、実生を始めたばかりの頃の私が「え、こんなに違うの?」と驚いたポイントです。同じように種まきをしている方の、心の準備になればうれしいです。
那須五葉松が、半年遅れで発芽した
まず見ていただきたいのが、こちらの那須五葉松です。

種をまいてから、しばらく音沙汰がありませんでした。他の種はとっくに芽を出しているのに、こちらはうんともすんとも言わない。正直、「これはもうダメだったかな」と半分あきらめていました。
ところが、なんと半年ほど遅れて、ぽつぽつと芽が出てきたのです。写真を見てもらうと分かるように、同じトレイの中でも、元気に芽を伸ばしているポットもあれば、やっと芽が出そうなポット①もありやっと折れ曲がりが見えてきたポット②もあり、もう少しで種帽子が見えそうなポット③があります。発芽のタイミングが、見事にバラバラなんです。
ここから学んだのは、「発芽しないからといって、すぐに捨ててはいけない」ということ。種には個体差があって、すぐ芽を出すものもあれば、何かのきっかけを待つように、ずっと後になって発芽するものもある。あきらめて処分していたら、この子たちには出会えませんでした。
種まきをして芽が出なくても、焦らないこと。土を乾かさないように管理を続けていれば、忘れた頃にひょっこり芽を出してくれることがあります。実生は、気長に待つのが大事なんだと、あらためて教えられました。

同じ時期にまいた黒松は、もう10cm近い
そしてもう一つ、面白い発見がありました。

じつは、この那須五葉松と「だいたい同じ時期」に、三河黒松の種もまいていました。その黒松がどうなっているかというと——すでに10cm近くまで、ぐんぐん伸びているんです。
かたや五葉松は、やっと芽が出て2〜3cm。かたや黒松は、もう立派な苗の姿。同じ「松」の仲間で、同じ時期にまいたのに、この差です。並べてみると、成長スピードの違いに驚かされます。
これは、樹種そのものの性質の違いです。黒松は生育がとても旺盛で、実生でもぐんぐん育ちます。いっぽう五葉松は、もともとゆっくり育つ性質の木。発芽も生育も、黒松に比べるとのんびりしています。

「遅い」のは、悪いことじゃない
ここで大事なのは、五葉松の成長が遅いからといって、それが「劣っている」わけではないということ。
五葉松は、ゆっくり時間をかけて育つからこそ、あの繊細で上品な葉と、しっとりした風格が生まれます。急がずじっくり作っていく樹種なんですね。黒松の力強さとはまた違った魅力があります。
だから、五葉松を育てるときは「黒松と同じスピードを期待しない」ことが、つきあい方のコツになります。黒松の隣に五葉松を置いておくと、つい「五葉松、遅いなあ」と心配になってしまいますが、それがこの木の普通のペース。比べて焦る必要はまったくありません。
これから実生を始めるなら、まずは黒松がおすすめ
ここまで五葉松と黒松の話をしてきましたが、「これから実生をやってみたい」という方に、私がまずおすすめしたいのは黒松です。
理由はシンプルで、成長が早いから。この記事でも紹介した通り、黒松は発芽してからぐんぐん伸びていきます。種をまいて、芽が出て、日に日に大きくなっていく——その変化を毎日実感できるのが、とにかく楽しいんです。実生を始めたばかりの頃は、成長が目に見えると、それだけでうれしくなります。五葉松のようにゆっくりな樹種は、じっくり付き合う楽しさがある一方で、最初の一歩としては「変化が見えやすい黒松」のほうが、挫折しにくいと思います。
実生の容器は「量」で選ぶ
もう一つ、実生を始めるときに迷うのが容器です。私が使ってみて感じた、量に応じたおすすめをお伝えします。
少しだけ育てるなら、プレステラ90という育苗ポットが使いやすいです。土がそこそこ入るので乾きにくく、水やりの失敗が減ります。さらに、根が鉢の内側をぐるぐる巻いてしまう「サークリング現象」が起きにくいと言われていて、根の生育にも向いています。少量の実生には、これくらいのサイズがちょうどいいです。
たくさん育てるなら、発泡スチロール箱での育成がおすすめです。とにかく安価で、たくさんの苗を省スペースにまとめて育てられます。そして意外な利点が、断熱性。発泡スチロールは保温効果があるので、冬場に苗を寒さから守るのにも役立ちます。数をたくさんまきたい方には、コストの面でも管理の面でも心強い味方です。
2026年2月の様子です


住むエリアによって冬の状況は異なりますが、私が住むエリアの2026年2月の様子です。霜柱で土が浮いたりするのは良くないので、保温対策ができる発泡スチロールはその点でおすすめです。
まとめると、少量ならプレステラ90、大量なら発泡スチロール箱。育てたい数に合わせて選んでみてください。
実生から学んだ二つのこと
今回の五葉松と黒松の実生記録から、私が学んだことをまとめます。
一つ、発芽の時期には個体差がある。同じ種類、同じ時期にまいても、すぐ芽を出すものもあれば、半年遅れで出てくるものもある。だから、すぐに芽が出なくてもあきらめず、気長に管理を続けること。
二つ、樹種によって成長スピードはまるで違う。黒松はぐんぐん、五葉松はゆっくり。その木の性質に合わせて、のんびり見守る心の余裕が大事だということ。
実生は、手をかけたぶんだけ結果が返ってくる……とは限らない、自然相手の営みです。思い通りにならないからこそ、芽が出たときの喜びもひとしお。半年待った那須五葉松が芽を出してくれたときは、本当にうれしかったです。
種から盆栽を育ててみたい方は、ぜひこの「発芽の個体差」と「樹種ごとの成長差」を頭の片隅に置いて、気長にチャレンジしてみてください。一緒に、実生の楽しさを味わっていきましょう。
赤石五葉松や吾妻五葉松のようにブランド種の実生にチャレンジされる方はそろそろ種の販売が始まっていますので、売り切れる前に買いましょう。
私は赤石五葉松を18粒、吾妻五葉松を109粒植えましたが赤石五葉松は4つ、吾妻五葉松は1つしか現在発芽していません。



止めはしませんが、非常に非効率になりますので強い興味があれば実生よりも苗の購入をお勧めします。

買いに行ける方は大阪は池田市にある養庄園がお勧めですし、近くに大きな盆栽屋さんがない場合はネットで購入しましょう。
少々お高めですがひょっとしたら実生よりも安くつくかもしれません。
それでは楽しく難しい盆栽ライフを楽しんでください。



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