10月は、一年でいちばん作業がはかどる月です
9月は、夏の我慢を終えて、少しずつ作業を再開する月でした。ただ、9月は残暑が残っていて、本格的に動けるのは中旬以降から。まだ様子を見ながら、という慎重さが必要でした。
10月は違います。すっかり涼しくなって、木もしっかり動いている。暑さで手を止める心配もなく、安心して作業を進められる、一年でもっとも手入れがはかどる充実の月です。夏に「何もするな」と我慢していた反動が、ここで気持ちよく解消されます。
とはいえ、やることが多い月でもあります。この記事では、10月にやっておきたい手入れを、真柏・黒松・赤松・五葉松を中心に、初心者にも分かるように整理していきます。秋のうちにしっかり手を入れて、木を充実させ、冬に備えましょう。
施肥|秋肥をしっかり効かせる本番

10月の手入れで、いちばん大切なのが肥料です。
9月から始めた秋肥(あきごえ)を、10月は切らさずにしっかり効かせます。涼しくて木がよく肥料を吸うこの時期は、施肥の本番です。ここで蓄えた養分が、冬を越す力になり、来年春の芽吹きの勢いを決めます。一年のなかで、もっとも肥料が効く大事な時期だと考えてください。
肥料を鉢の縁に置き、1か月に一度ほど新しいものに替えます。液肥を併用するなら、10日〜2週間に一度。真柏・黒松・赤松・五葉松、いずれもしっかり与えてよい時期です。固形肥料ならば匂いの少ないバイオゴールドがおすすめです。
ただし、与えるのは11月頃までと考えておきます。あまり遅くまで肥料を効かせると、木が寒くなっても動き続けようとして、かえって冬の寒さに弱くなります。10月にしっかり効かせて、11月には切り上げる、というのが目安です。
真柏(しんぱく)の10月

真柏は、10月が手入れのしやすい時期です。涼しくて木の動きが穏やかなので、剪定も針金も安心してできます。
剪定・葉透かし
夏に伸びて暴れた枝や、混み合った部分を整理します。9月にできなかった分も、10月はしっかり手を入れられます。ただし、真柏は枝を切ると切り口から枯れ込むことがあるので、太い枝を大胆に切るのは春に回し、10月は混んだところを透かす軽めの剪定にとどめます。手で葉を摘み取るのが基本です。
針金かけ
10月は針金かけに適した時期です。真柏は枝が柔らかく曲げやすく、この時期にかけた針金がよく効きます。樹形づくりを進めるチャンスです。
ただし、真柏は成長とともに枝が太り、針金が食い込みます。真柏の食い込み跡は長く消えないので、かけたら定期的に確認し、食い込み始めたら早めに外すか掛け直してください。かけたまま放置しないことが肝心です。
恰好が良いのは銅線ですがシャリがある場合には色移り(緑青)する可能性があるのと、お値段が少々お高めです。アルミ線で慣れてきたら銅線をお勧めします。
黒松の10月

黒松は、10月に古葉取り(ふるはとり)という大切な作業があります。
古葉取り
黒松には、前年に出た古い葉と、今年出た新しい葉が混在しています。この古い葉を、秋に取り除いてやるのが古葉取りです。
古葉を取ると、木の内側まで日光と風が届くようになり、内側の芽が元気を保ちます。また、葉の量が整理されて、樹形がすっきりします。混み合ったまま冬を迎えると、内部が蒸れたり、弱い芽が枯れたりするので、秋のうちに整理しておくのです。
やり方は、古い葉を手で丁寧に抜き取るか、鋏で切ります。一度に全部取ろうとせず、混んでいる部分を中心に整理します。強い枝(上部)は多めに取って勢いを抑え、弱い枝(下部)は少なめに残して力を保つ、というように、木全体のバランスを見ながら加減すると、なおよいです。
芽かきの仕上げ
9月にやった黒松の芽かき(二番芽の整理)がまだ済んでいなければ、10月上旬までに仕上げておきます。各箇所2芽ずつを目安に整理します。
赤松の10月

赤松は、黒松と同じ管理が基本です。古葉取りも、黒松と同様に10月に行います。
ただし、赤松は黒松より繊細なので、すべてにおいて少し控えめに、丁寧に。古葉取りも、一度に多く取りすぎず、様子を見ながら進めます。針金をかけるなら、黒松以上に食い込みに気を配ってください。赤松の幹肌は美しさが見どころなので、傷を残さないことが大切です。
肥料は、黒松と同じく秋肥を効かせますが、効きすぎると枝が間延びして赤松らしい繊細さが崩れるので、量は控えめを心がけます。
五葉松の10月

五葉松も、10月に古葉取りを行います。
五葉松は葉が密集しやすい樹種なので、古い葉を取り除いて風通しをよくすることが、内部の蒸れを防ぎ、内側の新芽を元気に保つことにつながります。
ただし、ここでも大事なのは木の元気を見極めること。元気な木なら古葉を取ってよいですが、樹勢の弱っている木から無理に古葉を取ると、体力を落として弱らせてしまいます。新芽の勢いがよい元気な木だけ、無理のない範囲で。弱い木は今年は見送る、という判断が肝心です。
五葉松は芽切りをしない松です。念のためお伝えしておくと、黒松・赤松のような芽切りは五葉松にはしません。葉の整理は、この古葉取りで行います。
置き場所と水やり|秋の日光をしっかり当てる

10月は、木を充実させるために日光をしっかり当てる時期です。
夏に半日陰や遮光下に置いていた木は、もう完全に日向に戻して構いません。松柏類は日光を好むので、秋の日差しをたっぷり浴びせることで、枝が締まり、葉が充実します。この秋の日照が、木の体力を蓄えるもとになります。雑木類(楓など)の遮光も、外して日光に当て始めます。
水やりは、気温が下がって土の乾きが遅くなるので、夏より回数を減らしていきます。ただし、これまで通り時間ではなく鉢の乾き具合で判断してください。10月は、まだ乾く日もあれば、涼しくて乾きにくい日もあります。土の状態を見る習慣を続けましょう。
植え替えは基本的に春へ

「涼しくなったから植え替えたい」と思うかもしれませんが、10月の植え替えは基本的におすすめしません。
これから寒さに向かう時期に根を切って傷めると、回復しきらないまま冬を迎え、木を弱らせるおそれがあります。松柏類の植え替えの適期は、あくまで春(3月頃)です。
例外は、鉢が割れた、根詰まりで水が入らない、といった緊急のケース。その場合は、根を大きく崩さず一回り大きな鉢に移す「鉢増し(スポッと抜き)」で応急処置をして、本格的な植え替えは春まで待ちます。
冬支度の準備を始める
10月の後半になると、そろそろ冬が視野に入ってきます。本格的な寒さ対策はまだ先ですが、準備を始めておくと後が楽です。

防寒に使う資材——フレーム、不織布、発泡スチロール箱など——を、寒くなる前に用意しておく。特に、挿し木した苗や種から育てた実生の苗、小さな鉢の若木は、成木より寒さに弱いので、どこで冬を越させるかを考えておきましょう。
置き場所も、これから寒風の当たらない場所(軒下など)へ移すことを見据えて、段取りを考えておくとよいです。10月のうちは、まだあわてて動かす必要はありませんが、心の準備をしておくと、寒波が来ても慌てずにすみます。
まとめ|10月にやること
10月は、涼しくて木もよく動く、一年でもっとも作業がはかどる充実の月です。
- 施肥:秋肥をしっかり効かせる本番。11月頃までにしっかり与える
- 真柏:混んだ枝の軽い剪定・葉透かし、針金かけ(食い込み注意)
- 黒松:古葉取りで内部に光と風を通す。芽かきの仕上げも
- 赤松:黒松と同じ古葉取り。すべて控えめに丁寧に
- 五葉松:古葉取りは元気な木だけ。芽切りはしない
- 置き場・水やり:完全に日向へ戻し、秋の日光を当てる。水やりは回数を減らす
- 植え替え:基本は春へ。緊急時のみ鉢増しで対応
- 冬支度:防寒資材の準備を始める。特に苗の越冬先を考えておく
夏をじっと耐え、9月に動き出した木が、10月には気持ちよく手入れに応えてくれます。この充実の秋にしっかり手を入れて、木を充実させておくことが、冬を無事に越し、来春に元気な芽を吹かせることにつながります。作業の楽しい季節です。一緒に、実りの秋を楽しみましょう。




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